研究課題/領域番号 |
08044289
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 三重短期大学 |
研究代表者 |
今井 勝行 三重短期大学, 生活科学科, 教授 (60035425)
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研究分担者 |
GINNS Edward National Institute of Health, Clinical Ne, Acting Chi
中村 正彦 大阪大学, タンパク質研究所, 助手 (20172439)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1996年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | グルコセレブロシダーゼ / 偽遺伝子 / ゴ-シェ病 / リソソーム |
研究概要 |
グルコセレブロシダーゼ(GC)はリソソーム膜に弱く結合している酵素で、その遺伝的欠損症として、ゴ-シェ病が知られている。患者細胞について、いくつかの変異が見つかっているが、表現型/臨床症状の多様性と遺伝子変異との間には相関は乏しく、GCの構造遺伝子の変異のみでは、疾患の原因を解明することが出来ないと考えられている。 ゴ-シェ病では、マクロファージなどに糖脂質が蓄積することから、骨髄系細胞株HL-60におけるGC遺伝子発現に関して、共同研究を行った過程で、従来、偽遺伝子と報告されていたものが発現していること、さらに、その転写産物は30kDaの蛋白質を産生し得ることをウサギ網状赤血球系で証明し、報告してきた。本研究はこの偽遺伝子発現の生理的意味について手掛かりを得ることを目的とするものである。 先ず、これまで報告した細胞株だけでなく、胎盤や骨髄のようなヒトの正常組織でも偽遺伝子が発現していることを観察した。この発現量が正常細胞と疾患細胞で大きな差があるのかどうかが問題である。検出は通常のPCR法によっているので、患者細胞を含めて定量的解析を行い、比較することが次の課題となった。両遺伝子配列の高い相同性から、偽遺伝産物に特異的な抗体を得ることは望めず、PCR法を(半)定量的に利用する方法を検討中である。次に、われわれがクローニングしたGC遺伝子は、正常型も偽遺伝子型も共に、3′-非翻訳領域に従来報告されているヒト肝癌や線維芽細胞の遺伝子に較べ、540〜550残基と長い配列を持っている。最近、この3′-非翻訳領域に転写調節機能がある場合が見つかっている。この領域に特異的なプライマーを作成し、PCR法により調べたところ、いくつかのゴ-シェ疾患者細胞のcDNAにこの配列が見つかった。より多くの患者細胞について系統的に調べると共に、このような長い配列を持つGC遺伝子と持たない遺伝子について転写/翻訳効率が異なるか否かを調べることは、最も興味がある点であり、現在進行中である。また、大量発現系(GST融合ベクターなど)を用いて、偽遺伝子蛋白を数十mgオーダー調整し、正常GCへの直接作用、抗体との反応性などについても検討する予定である。 GCのリソソームへの選別輸送機構は依然、不明のままである。リソソームの可溶性酵素は高マンノース型糖鎖が燐酸化されることによってマンノース6-燐酸(M6P)が生成する。このM6Pが特異的受容体によって認識されることが、リソソームへの選別の分子的基礎となっている。また、ある種のリソソーム膜蛋白はTyrを含むペプチドが認識のシグナルとなっている。しかし、GCはこれらいづれの機構にも依らないので、第三の選別機構があることが予想されてきた。GCは合成の場であるERを出た後に、膜結合型になることが知られている。HcpG2細胞から裸の膜標品を調整し、結合に必要な構造について調べた。リガンドは発現ベクター(pBS・SK^+、KS^+)に組み換えたGCから各種制限酵素で欠失したプラスミドを系統的に構築し、転写、翻訳して作成した。翻訳の際、^<35>S-Metを共存させ、標識リガンドとした。特異的結合はpH4.5-5.0で観察された。各種リガンドの内、特異的結合を示したのは、全長のGCのみであった。これは、結合には、4次構造の形成が必要であることを示唆するものであり、一部のペプチド配列のみの関与を否定するものでもあった。また、全長GC・DNAを酵母2ハイブリド系を用いれば、結合蛋白質のクローニングと同定が可能であることを示すものでもあり、Ginns博士との共同研究が進行中である。結合蛋白が同定されれば、選別輸送機構の解明につながるだけでなく、ゴ-シェ病の病因に関しても新しい展開が期待される。
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