研究概要 |
この研究は,深さ1m程度の土壌に埋もれた物体を検出できる偏波FM-CWレーダ装置を開発し,遺跡探査用の道具に資することが目標である。地中レーダとして適当と思われる周波数250-1000MHzを選定し,ホーンアンテナを使った偏波レーダが作成できたので,今年度はそのレーダを使い,大学の構内や実際の遺跡現場で埋没物体の実測を行った。特に,探査実験で数多くのデータ取得が必要となることから,アンテナをレールに載せ,それを引くことにより位置情報とレーダエコーを同時に自動的に取り込めるように改良した。その装置を用いて,探査実験を繰り返した。その結果,大学の構内の砂地で120cmの深さに埋めた幅30cmの金属板を検出することに成功した。また,偏波を使った検出実験を精力的に進め,散乱行列に基づく偏波データが地表面の不要反射を大幅に減少させると共に埋没物体の検出を容易にすることを確認した。さらに,地中での電波の減衰を補正する手法を開発し,地中内部の深いところまで探査できるように改良した。これらの成果は偏波の重要性を確認すると共に,深部探査への発展につながり,その意義は非常に大きい。一方,実際の遺跡現場で数回の実験を行った。場所は新潟県黒崎町の緒立遺跡(1996.5.21-22),福島県郡山市大安場古墳(1996.8.9-10)と群馬県北群馬郡子持村(1997.1.7-8)である。緒立遺跡では深さ70cm程度に礫が数多く埋もれていたが,偏波を使ったデータにて内部の様子が少し確認できた。大安場古墳では,地下80cm程度に異物が発見できた。後の調査で,遺構が発見されたと言われている。子持村では積雪・融雪のため,土壌中で電波の減衰が大きく,良好な検出結果は得られなかった。今年度の探査結果は重点領域「遺跡探査」第5回報告会にて発表した。
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