研究概要 |
本年度は照応形自分に焦点を絞り、その束縛条件の習得過程をより詳しく調べる為の実験を行った。実験には次の10種類の「構文-絵」のペアを用いた。 (1)構文:[AのB]は[自分のC]をVしてるかな。 a.絵(正):自分=AのBx4,b.絵(誤):自分=Ax4 (2)構文:AはBに[自分のC]をVしてるかな。 絵(誤):自分=Bx4 (3)構文:AはBに[Cが[自分のD]をVした/している]と言いました。 a.絵(正):自分=Ax4,b.絵(誤):自分=Bx4,c.絵(正):自分=Cx4 (4)構文:自分を含まない単文 a.絵(正)x2,b.絵(誤)x2 (5)構文:AはBに[CがVした/している]と言いました。 a.絵(正)x2,b.絵(誤)x4 被験者は、実験者が読む「お話」とそれと同時に提示される「絵」が「ぴったりと合っているか」あるいは「どこか違っているか」を、ベルとブザ-のどちらかを押すことによって示すよう指示された。(4)と(5)に対して100%の正解率を示した計13人(4〜6才)の被験者の、その他の「構文-絵」ペアに対する平均正解率(%)はそれぞれ次のようであった。 (1a):100,(1b):100,(2):63.5,(3a):3.8,(3b):98.1,(3c):100これは、照応形自分の先行詞が満たすべき3つの構造条件(I:自分を構成素統御すること、II:主語であること、III:自分と同一節内にある必要はないこと)のうち、Iが早い時期に機能し始めるのに対して、IIの習得がかなり遅れることを示している。また実験結果は一見、IIIが6才でもまだほとんど習得されていないことを示唆するようであるが、実験文が間接話法であると解釈された可能性があり、IIIの習得時期を特定する為には新たな実験を行う必要がある。
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