研究概要 |
言語の生成発展モデルの構築には,生命進化アルゴリズム等の非線形科学の成果や統計的・確率過程的手法の利用が不可欠と考え、Kaburagi et al.(1995)では,パターン認識に対するクラスターアプローチについての一般論を展開し,画像復元問題やハフ変換への応用だけでなく,言語パターン認識,音声パターン認識,画像パターン認識などへの応用が可能な定式化をおこない,言語情報処理能力と一般的認知能力との接点を明確にするための前提を、コミュニケーション理論もふまえて考察した.さらに,Sadanobu et al.(1996)詳しく述べたように,我々はこれらの利用可能性を追求する手始めとして,Haken(1978)が提案しているsynergeticsの枠組みを用いて,言語システムの通時的変化をマクロスコープ,ミクロスコープの両観点から記述する方法を検討した.具体的には、言語生成発展モデルを念頭におき、一方では、韻律面・文法面から、言語発出と言語理解の心的プロセスを分析し、言語の生成発展に関する主要な認知的/語用論的因子を抽出した。 さらに、中川(1997)では日本語が新しい概念の流入に伴って主に漢語を材料に新語を創出する方略を追究することにより、日本人は「世間」に代表される自己投入が容易な領域と「世界」に代表される自己投入が容易ならざる領域を持つことを指摘し、「世間」型の語、例えば「先祖、礼儀、習慣」は、世界型の語「祖先、儀礼、慣習」の語順を反転させることにより創出される傾向があることを指摘した。 他方、日本語の音変化傾向を生態システムのLotka-Voltera方程式でとらえることにより,単純なマクロモデルの言語システム分析への利用可能性を検証した後,言語のストカスティツクなプロセスを一般的なミクロモデルで扱うことにより,Lotka-Voltera方程式が当該言語システム内の人口平均値の方程式から導けることを示した。
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