乳児の物理の認識に関して、乳児の固形性の理解に関して影の認識と乳児の重力の認識について調べた。影の認識では、8-12ケ月児においては、影のあるほうに注視時間が長いことから、影の現象に注意が当てられており、影のない現象が乳児の期待を裏切る訳ではないことが示された。これ以降の年齢では、影の有無に関らず注視時間に違いのないことから、影の有無が乳児の期待を裏切る訳ではないことが示された。一方、重力の認識に関しては1歳半ころには見られる。ただし、落下と空中静止の方が、運動の対比のある落下と上昇運動よりも注視時間からは半年ほど遅く重力を仮定した認識が見られることから、重力を具体化する場面の違いによって、重力の認識に影響することが分かった。影の認識は、別の仕方で固形性を調べた研究では、1歳以前に見られていることから、固形性の認識には段階や順序性を仮定する必要のある可能性が示唆された。また、重力の認識もこれまでの研究に比べると遅い認識が示されていることから、実験事態や課題の違いによる違いが何を意味しているのかを調べる実験が必要なことを示唆するものと考えられる。 一方、生物学の認識に関しては、生物学の理論を持っているか否かに関して病気を例として調べた。その結果、現象の中から原因を特定し、またその原因が生物学的なものと4歳以降では理解できるが、ばい菌がどのような特徴を持つかはまだ正確な知識を必ずしも持っていない。これは、原因について生物的特性を詳しく理解していなくても、原因が生物だという理解は出来ることを示しており、具体的にばい菌の特徴についてはよくわからないが、それが生物か否かの判断が出来るというように、フレームワークが先に働くことを示している。幼児は病気の治療法に関して生物学的領域の区別が可能だが、原因や説明では十分に生物学的に独自の理論を発達させているとは考えにくいことが示された。
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