研究概要 |
本研究では九州文化史研究所に所蔵されている天草の石本家ならびに松木文庫(長崎平戸石本家)の琉球関係史料の情報化と実証的研究を目的とするもので,今年度はこれら史料の調査・撮影,目録のデータベース化の作業を中心に行なった。 まず石本家文書についての目録にしたがって史料の調査作業を行なった結果,約40点の琉球関係文書が保存されていることが確認できた。これらの史料には砂糖・唐薬種などのいわゆる琉球産物の販売に関する記録類や長崎における商況を薩摩藩あてに伝える書状,そして長崎市場における琉球産物の販売をめぐる幕府・薩摩間の確執を伝える史料などが含まれている。 いっぽう松木文庫の琉球関係史料としては『琉球産物切手本帳』や『琉球産物切本帳』などの西洋反布の見本帳を撮影することができた。これと同種・同系統の史料はハワイ大学所蔵の宝玲文庫や長崎県立図書館所蔵の村上家文書の中にも存在し,それらの比較検討を行なえば,また琉球反布の名が冠された西洋反布の生産と流通をめぐる九州・長崎商人,薩摩藩,琉球国三者の結び付き,さらにはオランダなどとの関わりなどが明らかになると思われる。 以上,これら今年度収集の史料群によって琉球国を媒介にした環東シナ海地域間の物流システムの解明が可能となるにいたった。今後はこれらの史料を原稿化して広く活用できるようにするとともに,あわせて分析を行ないたい。
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