研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,インタビュー実験形式による会話データの収録を実施した。ただし,昨年度の実験が非母国語話者を主な被験者としたのに対して,本年度は大部分母国語話者を被験者とした点が異なる。収録場所は昨年度同様,日米の2大学(国際基督教大学,プリンストン大学)である。3回にわたるインタビュー実験で計54名分のビデオ・音声データを収録した。この結果,昨年度収録分と合わせて,母国語話者55名,非母国語話者65名の計120人分(収録時間は被験者1人につき15-30分で,延べ約40時間)の被験者データが得られたことになる。なお,今回,試験的にノートブック型のパソコンを用い,ファイル形式で直接ハードディスクに書き込む方法を採用した。これにより,録音直後から音声データの編集を行うことが可能になり,音声サーバへの登録に至る過程が大幅に短縮された。音声データからテキストデータへの書き起こし作業は昨年度収録分を含めて,全データの約45%(55名分)が完了し,圧縮した音声データとともにインターネットのWWWサーバおよびFTPサーバ上で公開している。また,談話分析については,書き起こしの完了したデータを用いて,discourse markerおよび指示詞の用法についての第一次分析を開始し,すでに論文として研究成果の一部を発表した。 今後の研究計画として,データベース作成班(上村・横田・村野)では(1)テキストデータ全体のHTML文書化(2)全文検索エンジンの開発と評価(3)インターネット上でのVOD方式によるビデオ・データの公開を実現することをめざす。また,データベース分析班(上村・田吹・根津)では(1)会話データの標準化作業と特定語彙項目の出現頻度調査(2)ロールプレイモードにおいて,特定のタスク遂行時に見られる言い誤りの分析(3)談話の管理に関わる話者一聴者間のturn-takingを中心とする語用論的分析を同時並行的に行う。
|