研究概要 |
前年度開発したアルゴリズムを基に,その改良を行うと共に新しく浮世絵を対象にし,そこに描かれている人物を推定するための特徴量を定義し,計算機実験を行った。その結果,ユーザがペンで自由に描いた人物像からDBを検索したり,その人物が描かれている,あるいはその人らしい絵画を取り出し,提示できる可能性を示すことができた。次に,形状と色彩の感情効果について心理実験を行い,想起されるイメージとの関連を考察した。原画データとして浮世絵のなかでも役者絵を用い,顔の部分を閉曲線とみなし,いくつかの特徴量を定義し,それらを用いて識別実験を行った。中でも,円形度と距離分散/面積の画像サイズに対して不変量のパラメータであり,この2つのパラメータを2次元分布グラフに表すことによって,役者の特徴を表現した。例えば,一目見ただけで,おそらく「丸っこい顔だな」という印象を受ける人物の絵であれば,円形度が大きく,分散が小さいという特徴がグラフにも現れている。データ数も特徴量の選択もまだ不十分であるが,人物同定の1例として実験結果からこれらの特徴量が識別効果を持つ可能性が示せた。今後,さらに顔の部品間の位置関係,形状,色使いなどその他のパラメータの検討が必要になると考えられる。さらに,浮世絵にとらわれず,もっと広く画像DBのイメージ検索を考えるときに重要になるであろうと考えられる形状と色彩が誘起する感情効果を調査するための心理実験を行った。SD評価値を因子分析した結果,5つの因子が抽出された。第1因子は“はなやか-おちつき"の活動性の因子,第2因子は“ソフト-ハード"の潜在性の因子,第3因子は“調和-不調和"の評価性の因子,第4因子は“シンプル-凝った"の潜在性の因子,第5因子は“日本的-異国的"の伝統性の因子であることが,それぞれ推論された。 今後,これらの成果をどう有機的に結びつけて全体のDBシステムを構築していくかが大きな問題である。
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