研究概要 |
大型国語辞典『大辞林』(1988年初版,三省堂)の見出し語とそれに付されているアクセントの電子化テキストの形で抽出し,それを基本データとして数量的な分析を進めた。今年度は1拍〜20拍のすべての名詞(141,040語)のうち,2つ以上のアクセントをもつ語を抽出し,それぞれの拍数ごとの傾向を「ゆれ」の実態として検討した。その結果,次のような傾向が明らかとなった。([0][1][2]...はアクセントの型を表す。) 1.2拍の名詞では,アクセントの「ゆれ」をもつ語(456語)のうち[1]と[2]の型の「ゆれ」が全体の60%を占めている。このうちの71%が第1拍において母音の無声化が観察される。 2.3拍の名詞では「ゆれ」の全体(3197語)のうち,[0]の型を含む「ゆれ」が90%を占めている。母音の無声化が目立つのは[1]と[2]の型の「ゆれ」で,これらの54%が第1拍において無声化母音をもっている。 3.4拍の名詞では「ゆれ」の全体(4807語)のうち,[0]の型を含む「ゆれ」が86%を占めている。それらのうち,[0]と[1](23%),[0]と[2](28%),[0]と[3](21%)の「ゆれ」が多い。4拍語の名詞見出し語全体(45,047語)のうち,[0]の型をもつものは72%にのぼり,上の「ゆれ」は優勢な[0]の型(平板式アクセント)に対する類推の現象とみなすことができる。最近の「アクセントの平板化」はこうした一般的な傾向を背景にしたものと考えられる。 4.5拍以上の名詞では語末から数えて3拍目と,[0]の型を含む「ゆれ」が優勢である。5拍語では,「ゆれ」の全体(1855語)のうち,[0]の型を含むものが63%,[3]の型(語末から3拍目)の型を含むものが71%を占めている。
|