平成7・8年度の2年間にわたり、白黒二値の文書資料と写真などの濃淡画像について、劣化サンプルの収集・分類、画像回復アルゴリズムの実装を行った。また、画像処理の非専門家向けのユーザーインタフェースの開発を行った。 平成7年度には、白黒二値の文書資料について劣化画像回復アルゴリズムの検討と処理ルーチンのライブラリ化、及び人文系研究者向けグラフィカルインタフェースの試作を行った。対象としたアルゴリズムは、多値画像におけるノイズ除去、閾値自動選択二値化、適応的二値化、二値画像のノイズ除去、反転、回転、エッジ強調などの基本画像処理、画像ファイル入出力などである。平成8年度には、多値濃淡画像について劣化サンプルの検討、劣化回復アルゴリズムの選択、ライブラリ化を行った。画像入力系では、スキャナ・ビデオキャプチャ等のTWAIN対応機器のサポートを実装した。画像出力系では、Windows対応プリンタへの印刷を実装した。ユーザーインタフェース部分については、画像処理に関する専門知識を入れた処理プロセス選択機能を検討し、非専門家にとってより使いやすくなるように改良した。また、すべてのコードを32ビット対応に変更し、処理速度の向上を実現した。 実装にあたっては、人文系研究者が現実的に整備可能な計算機環境を十分考慮し、大量の計算資源は必要としないことに主眼をおいてアルゴリズムの検討を行なった。成果として作成されるソフトウェアは、人文系研究者が所有するような多くのパソコンの上で動作するものとなっている。開発したソフトは、CHITool(Computers and the Humanities Image Tool)として、無償で流通させる予定である。
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