研究概要 |
本年度の研究テーマは大きく二つの方向にわかれる。 1非可換多様体の変形理論 通常の多様多の非可換方向への無限小変形はその多様体上の双対二形式できまる。簡単な変形の例を考えることにより、退化しない二次形式に対応する変形が最もうまく行くことがわかった。(この場合はGeometric quantizationに対応している。)どうやら変形にでて来る2-formとリーマン多様体上の計量との間のアナロジーを用いながらやるのがよいらしい。(Kahler多様体のKahler formとKahler計量との関係はこのアナロジーが最もうまく行く場合である。)メトリックが正則関数になることは余り期待できないのと同様に、変形を考える際もまずはC^∽のカテゴリーでするのがよいということになる。そこで、通常の多様体の関数環の変形の特徴付けを調べることが次の目標である。 2.《超変数の付加》とドラム理論の拡張 次の命題は、当初A,Bが可換環のときに研究のきっかけとして考えたものだが、実はA,Bが任意の超代数であっても成り立つことがすぐにわかった。 A,Bを超代数,θをodd variableとする。このとき、次のような関手論的な全単射が存在する。 Home(A,B[θ])→Hom(A_<DR>,B) ただし、ここに、A_<DR>はAとΩ^1(A)で生成される超代数である。 この命題におけるθの役割は可換理論におけるdual numberの役に似てるが、B[θ]上にd/dθというθ方向の微分が定義できる所が超理論の長所である。この微分に対応して、A_<DR>の無限小自己同型が存在し、それがいわゆるA上のドラム理論につながる。 さて、上の形で命題を述べておけば、多変数への拡張は容易である。かくして、ドラム理論のある種の拡張が得られる。オリジナルのドラム理論は一階の微分を何回も積み重ねるというイメージなのに対し、この理論では、ジェットの空間を扱うことになる。(もっと具体的にはこれら二つの理論では。貼り合わせにおける変換関数の挙動が違う。)ここの所をうまく表現する道具を見つけねばならない。 以上のことが次第に明確になってきたが、数理物理的な観点からの応用はまだこれからの課題として残っている。
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