研究概要 |
高度好熱菌アスパラギン酸アミノ基転移酵素(th-AspAT)は分子量約42,000のサブユニット2個からなるダイマーである。大腸菌AspATとth-AspATの一次構造のホモロジーは15%と低い。このため、重原子同型置換法を用いて、構造を求めた。全体構造と2次構造については、th-AspATはAspATと似てはいるが、有意な違いも数多くある。活性部位の比較、基質結合時の大きな誘導適合の有無等はこれからの検討課題である。th-AspATの結晶は小さいが、良質で、きれいなラウエパターンを与えるので、今後は時間分割を目指して研究を進める。また、中等度好熱菌AspATの結晶ができたので、構造を決定し、大腸菌AspAT, th-AspATと比較する。 大腸菌分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素は分子量約34,000のサブユニット6個からなる、6量体である。最近の分類によれば、アミノ基転移酵素の多くはFold type Iに属するが、BCATはFold type IVに属する。BCATとAspATや芳香族アミノ酸アミノ基転移酵素(AroAT)の間に一次構造上のホモロジーは無い。重原子同型置換体の作製が困難で、EMTS誘導体のみが同型置換体として使用できた。そこで、サブユニットあたり7個あるMetをselenomethionineに変えて、重原子誘導体として用い、構造を解くことができた。分子の形状は三角プリズム型で、D3の対称を持つ。BCATとAspATのサブユニットを比較すると、2次、3次構造ともに全く似ていない。BCATのアミノ酸-1は分岐鎖アミノ酸(Leu, Ile, Val)である。活性部位には、疎水性のアミノ酸の側鎖に対する認識部位とGluの側鎖の認識部位が別々に存在していた。AroATの場合には認識部位は一個所であり、BCATとは基質認識の仕方が異なる。
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