(1)研究の背景と目的:誘電率が周期的に変化する物質(フォトニック格子)中では、電磁モードの存在しない周波数領域(フォトニックバンドギャップ)の出現やこれに伴う自然放出の抑制、さらにはギャップ内局在モードの生成等、これまでに無い光学特性が予測され、その一部は実証されつつある。特に、局在モードを利用した単一モード発光ダイオードが低雑音、高効率、高コヒーレンスといった特徴を持つことが予測され、その実現が期待されているところである。本研究は、このような局在モードからの輻射過程を理論的に解析するため、(1)局在モードの固有周波数および固有関数の正確な導出と、(2)フォトニック格子中での発光過程を記述する理論的枠組みの構築を目的とする。 (2)研究成果:そこで、本研究では、(1)格子欠陥を有するフォトニック格子中に置かれた振動双極子からの輻射過程を、ギャップ内局在モードを考慮してグリーン関数法により定式化した。次に、数値解析の一例として、2次元正方格子について、格子欠陥の近くに置かれた仮想的な振動双極子からの輻射電磁場を有限要素法で調べることにより、ギャツプ内局在モードの固有周波数と固有関数を求めた。さらに、(2)密度行列で記述される外来的分極を湧き口とする輻射場を、グリーン関数法で解くことにより、フォトニック格子中のコヒーレント光学過程を取り扱う理論的枠組みを構築した。
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