研究概要 |
フォトニックバンド構造は光学半波長周期をもつ多次元構造である.特に半導体円柱配列からなる2次元構造は,効果的な光波・電子波の相互作用と単純な製作プロセスが両立できることから超高効率発光素子への発展が期待されている.本研究では,同構造の最大の特長であるフォトニックバンドギャップという光の禁制帯の直接観測を目的とし,実験主体の研究を行った.製作には加工損傷や表面再結合の問題が少ないGaInAsP/InP半導体を採用し,これに電子ビーム描画と反応性イオンビームエッチングを施すことで円柱構造を形成した.配列ピッチは0.5〜1ミクロン,太さは0.2〜0.4ミクロン,高さは1.5ミクロンと極めてアスペクト比の大きい微細構造である.本研究ではメタン系ガスを用い,円柱の側壁荒さ2ナノメータ以下の平滑な円柱の形成に成功した.このときイオンの加速電圧を200Vと低めに設定することで,側壁の結晶損傷も数ナノメータ以下と小さくできた.フォトニックパンドギャップは2次元画内の透過スペクトルを測定することで評価できるが,上記のような微細構造に白色光を入射させることが困難である.そこで本研究では光源まで集積化した構造を製作し,光励起によるギャップの一括測定を実現した.その結果,フォトニックバンド計算から予測された波長領域において最大で-4dBの透過光の減衰を確認した.理論的には-20dBの減衰量が予測される.実験値が理論値に比べて不足するのは,柱の垂直性の不足によりフォトニック結晶の波長特性がぼやけてしまったためと考えられる.ただしギャップの周波数帯が理論と一致したことから,理論計算の妥当性が証明できた.これは同ギャップの初の実験的検証であり,物理的概念でしかなかったフォトニックバンド構造を発光素子として実現させる大きな足がかりが得られたものと考える.
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