結合量子構造におけるコヒーレント量子振動およびそのデバイス応用について理論的研究を行った。96年度の本研究では(1)二重結合量子構造のコヒーレント量子振動とレーザ光の相互作用を解析し、レーザ光により量子振動を制御できること、(2)多重結合量子構造において個々の量子構造のクーロン帯電エネルギーが電子の局在現象を導くことを明らかにした。 具体的には結合量子構造のコヒーレント量子振動をレーザ光によって制御することを解析的に検討し、下記の結果を得た。レーザ光の周波数と強度を変えることにより結合係数を制御でき、これらのある特定の値で結合係数をほぼ完全にゼロにすることが可能であり、この条件で電子を一方の量子構造に局在させることができる。この局在条件を最終的に満たすパルス光を用いれば、始めに非局在の電子を一方の量子構造に局在でさらに、2つの量子構造のエネルギー準位が非共鳴の場合、この非共鳴エネルギーがレーザ光子エネルギーの整数倍のときに光子介在トンネルが現われる。これらの現象は定性的に、レーザ光の交流電界が量子構造のエネルギー準位を正弦波的に振動させ、ラジオの搬送波の周波数変調と同様の理由で、1つの準位がレーザ周波数の高調波成分に分裂することと、そのn次の高調波の振幅が第1種のn次のベッセル関数で与えられることから簡単に理解できた。 また、直線鎖および円形鎖状に結合した多重量子構造における電子のコヒーレント局在現象を解析し、各量子構造にトラップされる電子の電荷量に比例したクーロン帯電エネルギーが結合方程式に非線形項をもたらし、この効果により電子の局在が起ることを示した。
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