研究概要 |
本研究では化学反応および物性両面からみて非常に興味深い性質を有する非天然化合物、有機フラーレン化合物および炭素三員環化合物、に着目し,その性質を利用して核酸と相互作用を示す化合物を合成するための方法論を確立するための研究を行った. 本年度はフラーレンの持つ疎水結合能力を積極的に活用するために,新規のトリス環化反応剤をあたらに設計しC60との反応に応用することにより多重官能基化フラーレンを合成,さらに核酸認識部位を有する分子の合成を行い,その核酸認識能を検定した.有機フラーレンのX一線構造解析を行いこのデータと理論計算の結果の照合を行い,この検討結果に基づいて適切に設計した連結部によって結ばれた二つ以上の活性部位をフラーレンに反応させた.このようにて複数の二重結合を位置選択的に官能基化するためのいくつかのルートを検討した.また水溶性フラーレンの光細胞毒性をC70について検討した結果,細胞膜に取り込まれた状態のフラーレンは光活性化を受けづらいことが判明した.以上の結果に基づき,多重官能基化フラーレンの官能基に塩基配列特異的な核酸認識部位を導入することで,核酸のヘリシティーを認識すると同時に特異的な核酸結合能を併せ持つ強力な核酸結合力をもった機能性分子をデザインできるのではないかと考え検討を行った.以上の結果を5報の学術論文として発表した.
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