研究概要 |
安定な+3価以外の異常な酸化状態として+4価をとり得るプラセオジムを含むペロブスカイト酸化物BaPrO_3,SrPrO_3を合成し、磁化率、電子スピン共鳴(ESR)スペクトル測定等を行った。プラセオジムの4価イオンはペロブスカイト型構造のBサイトに安定に保持されることを見い出し、その構造は斜方に歪んでいることがわかった。BaPrO_3では11.5Kで反強磁性転移したが、SrPrO_3は4.2Kまで常磁性挙動を示した。結晶構造解析を行うと、BaPrO_3ではほぼ直線であったPr-O-Prの並びが、SrPrO_3では直線上から大きく逸脱し、このため酸素を介した超交換相互作用がSrPrO_3では起こりにくくなり、磁気的相互作用が見られなくなったと考えられる。Pr^<4+>のESRスペクトルは、反磁性体であるBaCeO_3にドープし、温度を4.2Kまで下げることにより測定できた。4f電子と希土類原子核との間に異常に大きな磁気的相互作用があるなど、特異な4f電子の挙動を見い出した。^<141>Prの核スピン(I=5/2)との相互作用による超微細構造が見られ、Pr^<4+>/BaCeO_3のスペクトルでは、許容遷移に加え、禁制遷移も測定できた。Pr^<4+>/BaCeO_3では、Pr^<4+>の周りの最近接酸素イオンによる結晶場はオクタヘドラル対称として扱え、解析により|g|=0.741,超微細結合定数A=0.0609cm^<-1>を得た。g値は、基底状態J=5/2のΓ_7レベルのみから計算される-10/7の絶対値よりはるかに小さく、このことから4f電子には結晶場効果が著しく作用することがわかった。Pr^<4+>/SrCeO_3のESRスペクトルには異方性が見られた。これは、BaCeO_3と比べ、SrCeO_3の結晶ではより斜方に歪んだ構造を持つため、セリウムサイトに入るPr^<4+>の周りの最近接酸素イオンによる結晶場の対称性がオクタヘドラルから著しく歪んでいることによることがわかった。
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