研究概要 |
溶液中の希土類(RE)-クラウンエーテル錯体の水和・構造とその性質を理解することは溶液化学や錯体化学だけでなく,REの分離化学においても極めて重要である。本研究では主に放射性トレーサーを用いて,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Yb,Luのヘキサフルオロアセチルアセトン(Hhfa)-18-クラウン-6(18C6)-ニトロベンゼン系における抽出平衡を調べ,抽出錯体の組成を決定した。また,La錯体については^1H NMR測定を行い,先に,La-トリクロロ酢酸イオン-18C6錯体で得られた結果と比較した。0.01M Hhfa-0.01Mあるいは0.001M18C6による上記REの抽出は,期待通りに軽希土に選択的で,Laが最もよく抽出され,以下,原子番号順に抽出は低下し,重希土では差はほとんどみられなくなった。水相のイオン強度を(H,Li)C10_4により0.1Mと固定し,有機相のイオン強度をテトラブチルアンモニウム(TBA)C10_4により調節し,平衡解析を行った。REの分配比に対するhfa,18C6,TBA濃度の影響を詳細に調べたところ,軽希土では陽イオン錯体,RE(hfa)_2(18C6)^+が抽出されることが明らかとなった。一方,重希土では,TBA存在下で陰イオン錯体,RE(hfa)_4^-が優先的に抽出されることが見いだされた。重水素化ニトロベンゼンにLa(hfa)_2(18C6)^+を抽出しNMRスペクトルを測定した。4.141ppmに18C6のメチレンプロトンの鋭い1重線が現れ,遊離の18C6のケミカルシフト3.664ppmよりもはるかに低磁場シフトすることが分かった。このシフトは,18C6錯体でこれまで観察されたものの中で最大であった。これらは,18C6の6個の酸素原子がLaイオンに強く結合していることを示唆する。
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