研究概要 |
2,2'-ビピリジンの6,6'-位にフェニルアラニンと安息香酸とのアミド結合をそれぞれ持つ6-benzoylamino-6'-phenylaranylamino-2,2'-bipyridine(1a)は、メタノール中30℃という温和な条件で、触媒量のランタニド塩化物が存在すると、フェニルアラニン側アミド結合のみが加溶媒分解を受け、フェニルアラニンメチルエステルがほぼ定量的に生成する。この反応の進行には、基質のビピリジンおよびビスアミド構造が不可欠であり、基質のビピリジンおよびアミド酸素が配位した1:1錯体中間体を経由して反応することを各種スペクトル法を用いて確認した。また、α-アミノ基を持つアシル側アミドのみが加溶媒分解を受けるが、このときα-アミノ基が結合した側のアミドプロトンは解離しやすくなり、解離型アミド構造をとることが電子スペクトルより明らかにした。解離型アミドでは、アミド酸素が負電荷を持つためにランタニドへの配位が強くなり、その結果キレート環内の歪みが大きくなり、カルボニル炭素上の正の部分電荷が増加することを結晶学的データや分子軌道計算などを用いて示し、温和な条件でもアルコール酸素の求核攻撃を受けやすくなることが、効率の良い加溶媒分解を可能としているものと推定した。
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