本研究課題では、“従来の複合酸化物はストイキオメトリー(組成)の制御が完全でないため、物質本来の特性を100%発揮していないという立場"から、あるいは、“組成が厳格に制御されたときに隠れた機能が出現する可能性すら残されているという立場"から、組成複雑な複合酸化物を作製する技術として優れる“錯体重合法"を、希土類含有機能性複合酸化物の特性向上の手段として発展的に利用した。“錯体重合法"は、金属クエン酸とエチレングリコールとの間のポリエステル化反応に基礎を置き、金属錯体形成反応と高分子反応とを同時に進行させることにより、構成成分が偏析することなく均一に分散した前駆体が得られるところに大きな特徴を持つ。本年度の主たる成果は、1)Y_2Ti_2O_7の低温合成において、遊離したY_2O_3とTiO_2との固相反応によってY_2Ti_2O_7が生成するのではなく、ほぼ原子レベルでYとTiとが分散した非晶質性の前駆体から直接Y_2Ti_2O_7が結晶化することを明らかにしたこと、2)固相法では単相化が著しく困難とされるLaAlO_3およびY_3NbO_7を研究対象とし、錯体重合法を用い、触媒として利用可能な比表面積をもつ粉体の低温合成に成功したこと、3)固相法で合成した試料と比べて3-4倍他界活性を有するK_2La_2Ti_3O_<10>水分解光触媒の作製に成功したこと、などである。
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