研究概要 |
本研究では、含希土類機能性セラミックス材料を電子論に基づいて設計することを最終の目的として、モデルクラスターとして希土類を格子間位置に含んだα-およびβ-Si_3N_4をとりあげ、その電子状態をDV-Xα法により詳しく調べ、実験的に知られている諸物性との対応を系統的に調べた。Ln^<3+>イオン周囲の化学結合性を評価したところ,Ln-N,Ln-Siともに強い反結合性を示し,この反結合性は,Lnのイオン半径の増大にほぼ比例して強くなった.この反結合の強さは,β-Si_3N_4構造においても同様であったが,Lnイオン周囲のSi-N結合がα-Si_3N_4において強化される分だけ,半径の小さいYb^<3+>などのイオンがα-Si_3N_4において安定化されることが判明した.このことは固溶量についての実験結果とよく対応している. さらに構造セラミックスの靭性を決める上で重要となる粒界結合力について,粒界のモデルクラスターを構築し,検討した.その結果,β-Si_3N_4構造でも粒界には,希土類原子は安定に存在可能で,La^<3+>のような大きなイオン半径を持つ原子が存在する場合と,Yb^<3+>のような小さいイオン半径を持つ原子が存在する場合とでは,界面結合力が前者で著しく低下することが判明した.この結果は,他の研究者による亀裂進展挙動とよく対応していた.以上の結果をもとに,窒化ケイ素セラミックスの材料設計の指針を,第一原理計算を基に初めて見いだした.
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