研究概要 |
選択性の高い抽出能をもつ酸性有機燐酸化合物およびp-t-ブチルカリックスアレンを選びそれらの希土類錯体の化学的性質を検討し、イオン抽出能、錯体の化学構造を明らかにした。しかし、含窒素アザチアクラウン化合物とそのランタニド錯体については未だ報告がない。含窒素チアクラウンエーテルはハード性の希土類金属イオンおよび中間のソフト性をもつ遷移金属(特にRu,Rh,Cu)に特異的に相互作用することが考えられる。希土類金属イオンの抽出は非常に酸性側か、アルカリ性側で行うことが多いが、アザチアクラウン化合物を用いると中性領域での抽出が可能であり、抽出選択性の改良が期待される。この錯体の化学的性質を検討することも非常に興味がある。さらにこれら有機試薬の誘導体を合成した。即ちチアクラウンエエーテル(HTCO:1,4,7,10,13,16-hexathiacyclooctadecane),アゾチアクラウンエーテル(COATCO:1,10-diaza-4,7,13,16-tetrathiacyclooctadecane),フェロセノ-アゾチアクラウンエーテル(FATCO:7,16-Bis(ferrocenylmethyl)1,4,10,13-tetrathia-7,16-diaza-cyclooctadecane)、ビシクロ[8.8.8]-1,10-ジアザ-4,7,13,16,21,24-ヘキサチアヘキサコサン(6SCPD:yclobicyclo[8.8.8.]-1,10-diaza-4,7,13,16,21,24-hexathiahexacosane),1,7,10,16-テトラオキザ-4,13-ジアザシクロオクタデカン(K22)試薬を用いた溶媒抽出挙動およびそれら錯体の化学的性質との比較検討も行った。平成7年度実績報告書以後の成果に付いて報告する。ATCO(L)とラウリン酸(HA)_2を用いたセリウム、ユーロピウム、カドリニウムの協同抽出を検討した。抽出率はラウリン酸のみの抽出より、20%程高くなり、抽出選択性の向上ガ見出された。また、抽出種はCeLA_33HA,EuLA_3HA,GdLA_3NO_32HAである。抽出定数1ogK_<ex>はCe(III)(-8.5),Eu(III)(-6.7),Gd(III)(-1.8)であった。ジクロルエタン溶媒中での金属錯体の安定度定数がCe(III)(5.3),Eu(III)(5.6),Gd(III)(2.8)と求められた。更に分離係数はCe/Eu=2.5,Eu/Gd=1.4であった。抽出定数の温度変化の検討より、エンタルピーの変化の寄与がエントロピーの寄与より大きいことが分かった。さらに、ATCOとの比較のため、K22を用いて、ランタニドの抽出分離をトリフルオロアセチルアセトンの存在で検討した。このK22試薬がマスキング効果があことを見出し、水溶液中でのLn(III)-K22錯体の安定度定数を求めた。Pr(III)(10.57),Eu(III)(11.45),Yb(III)(11.11)であった。これらの結果をもとに希土類金属イオン間の相互分離条件を検討した。
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