研究概要 |
均質かつ超微粒子の複合酸化物を低温で得ることを目的として、多核錯体Ln'_xLn"_<1-x>[Fe_yCo_<1-y>(CN)_6]・nH_2O(Ln=希土類元素)を合成し、熱分解挙動の検討及び得られた酸化物の結晶構造解析を行った。 その結果、Bサイトの遷移元素としてFe,Coどちらを用いても、イオン半径の大きい希土類元素Ln=Pr〜Gdを用いた場合では、600〜800℃の低温でペロブスカイト型酸化物の単一相が得られ、イオン半径の小さいLn=Dy〜Ybでは、一旦600〜800℃でLn_2O_3やFe_2O_3,Co_2O_3などの単独酸化物の生成がみられ、更に高温でペロブスカイト型酸化物が主生成物として得られた。しかし、高温で処理してもイオン半径の小さい希土類では単相のペロブスカイト型酸化物は得られず単独酸化物が微量混在している。これは幾何学的にイオン半径の小さい希土類元素では、ペロブスカイト型構造中の安定な8配位をとりにくいためであることがわかった。2種の希土類元素Ln'とLn"あるいは2種の遷移元素FeとCoを用いた複合酸化物を多核錯体から合成したところ、その結果2種の金属元素はその仕込み量に応じてペロブスカイト型構造の同じサイトを占有していることが確認されている。この得られた酸化物の平均粒径は0.2μm以下ときわめて小さかった。 以上の結果より、シアノ錯体の熱分解による複合酸化物の合成は、低温合成、微粒子、均質さ等の点で従来の固相反応法などと比べ、かなり有効な方法であることが明らかになった。
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