研究概要 |
前年度までの研究で、新規錯体である{[Eu(napy)_2(H_2O)_3][[(μ-NC)_2Fe(CN)_4]4H_2O}_x(napy=1,8-ナフチリジン)が[Fe(CN)_6]^<3->イオンを橋架け配位子とする1次元の配位高分子錯体であることを明らかにした。この錯体中で、ナフチリジンはスタック構造を有していることも分かったので、本年度は、類似の配位子であるビピリジン(bpy)、フェナントロリン(phen)や3座配位子であるタ-ピリジン(terpy)を用いて錯体の合成を行った。X線結晶構造解析の結果、Eu原子を含む錯体はすべて1次元のポリマー錯体であることがわかった。^<151>Eu-メスバウアースペクトルの温度変化もその結果とよく一致し、メスバウアースペクトルの温度変化測定が分子間の結合状態の研究に有用であることがわかった。さらに、^<57>Fe-メスバウアースペクトルの結果から、Ln-nap(Ln=Tb-Lu)やLu-bpy(Ln=La-Nd)錯体では、2種類のダブッレトが観測されEu錯体とは異なることが示唆された。そこで単結晶の得られた錯体について構造解析を行い、{[Ln(napy)_2(H_2O)_3][(μ-NC)_2Fe(CN)_4]4H_2O}_x(Ln=La-Gd)、{[Yb(H_2O)_8][Fe(CN)_6]5napy6H_2O}(Tb-Lu)、{[Ln(bpy)_2(H_2O)_4]_2[(μ-NC)_2Fe(CN)_4][Fe(CN)_6]4H_2O}(Ln=La-Nd)及び{[Ln(bpy)(H_2O)_4][(μ-NC)_2[Fe(CN)_4]1.5bpy4H_2O}_x(Ln=Sm,Eu)のように表されることを見いだした。単結晶が得られにくいものや錯体自体の合成ができない系もあり、構造が完全に分類できたのはナフチリジン錯体の系のみであるが、今後さらに研究を継続し、全系について構造を明らかにしたい。これまでに得られた結果から、希土類-鉄錯体において希土類の種類や配位子が異なることにより、構造が変化し、同じ希土類元素錯体でも配位子が異なる場合には異なった構造を形成することがわかった。また、ポリマー錯体の場合にはいずれの配位子の場合にも配位子同士のスタッキング構造が観測されており、配位子と構造、希土類元素と構造などについて体系化し、希土類錯体の新展開に貢献したい。
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