研究概要 |
Nd^<3+>イオンをドープしたLaF_3結晶,Tm^<3+>イオンをドープした非線形物質LiNbO_3やYSGG(Y_3Sc_2Ga_3O_<12>)結晶,Er^<3+>イオンをドープしたLiNbO_3結晶について吸収・発光などの分光学的研究を行うと同時に吸収帯・発光帯の遷移確率などの理論的計算を行った. LaF_3:Nd^<3+>結晶およびLiNbO_3:Er^<3+>結晶については,ストークス発光の測定だけでなく,励起方法として多光子吸収過程による方法を用いそれに伴うアップコンバージョン発光を詳しく調べた.二光子吸収や三光子吸収によるアップコンバージョン過程を通しての反ストークス発光における多フォノン無幅射緩和過程と,通常の一光子吸収によるストークス発光における多フォノン無幅射緩和過程の違いを明らかにした. LiNbO_3:Tm^<3+>結晶については,1800-200nm領域に現れるTm^<3+>イオンによる吸収帯の振動子強度f^<exp>と,Judd-Ofelt理論より計算され理論的に求められたf^<cal>の値とを比較した.両者にかなりの一致が見られた.さらに,吸収遷移が電気双極子遷移によるものと磁気双極子遷移によるものとの両者から起こっているとして計算した.同様にして,発光遷移確率A,蛍光寿命τ_<rad>,各発光帯での成分比β,蛍光遷移断面積σを計算した.実験値にかなり一致する理論値が得られた. YSGG:Tm^<3+>結晶は2μmの波長のレーザーを発振することが知られている.このレーザーのCWレーザー発振においては,ポンプ光のゆらぎに対応してレーザー強度のゆらぎが生ずるが,このゆらぎについてスミルノフ教授らのグループと共同してレート方程式を用いて理論的に調べた.レーザー共振器の間隔を長くするか,モジュレーターを挿入することにより,ジャイアントパルスを得ることが可能であると予言できた.
|