研究課題/領域番号 |
08221101
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田村 類 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (60207256)
|
研究分担者 |
東 長雄 愛媛大学, 理学部, 教授 (00093914)
|
研究期間 (年度) |
1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1996年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
|
キーワード | 光学分割 / ラセミ結晶 / 固溶体 / 再結晶 / 結晶多形 / ラセミ化合物 / 混晶 / 光学冨化 |
研究概要 |
19世紀半ばのバスツールによる不斉結晶の発見以来、ラセミ体の再結晶により光学分割が可能なのは、ラセミ混合物[(+)分子結晶と(-)分子結晶の単純混合物]の優先晶出に限られ、ラセミ化合物[(±)結晶]の再結晶による光学分割は、原理的に不可能と考えられていた。しかし、我々は、あるラセミ体の結晶の性質を検討している際に、ラセミ化合物でも再結晶により容易に光学分割を起こす場合があることを発見した。そこで、この異常な光学分割現象のメカニズムを解明し、この現象が一般的な光学分割法となるための条件を明らかにすることを目的とし、同様の光学分割現象を示す化合物を探し求め、それらの結晶の性質を調べ、これを基にして、本光学分割現象のメカニズムを検討した。 ある一群の不斉なグリセロール構造を有するスルホニウムスルホン酸塩やアンモニウムスルホン酸塩、計7化合物のラセミ化合物結晶[(±)結晶]を、超過飽和(8〜20倍)アルコール溶液から再結晶することにより、以下の特徴をもつ光学分割現象が起こった。1.母液中でいずれか一方のエナンチオマー[例えば(-)体]が大過剰(最高100%ee)になる。2.この際析出する低エナンチオマー純度の結晶(もう一方のエナンチオマー[(+)体]が過剰に存在)を再結晶すると、その若干過剰なエナンチオマー[(+)体]が母液中で大過剰となり、同時に析出してくれる結晶(低エナンチオマー純度)中に過剰なエナンチオマーのキラリテイー[(-)]は、再結晶前の過剰なエナンチオマーのキラリテイーとは必ず逆になる(析出結晶におけるキラリテイーの逆転現象)。3.従って、ラセミ体の再結晶を行い、ついで析出する結晶の再結晶を順次繰り返し、それぞれのエナンチオマーが過剰(高エナンチオマー純度)となった母液を集めるだけで、光学分割が完了する。次に、光学分割現象を示した化合物のラセミ体の安定な結晶形態を調べたところ、いずれもラセミ化合物[(±)結晶](Pl, Z=2)であり、光学分割現象には結晶の多形現象(安定なラセミ化合物結晶と準安定な混晶の存在)が密接に関係していることが示唆された。 以上の結果より、再結晶における結晶生成のプロセスとして、溶液中で安定な環状二量体からクラスターを経ての混晶(P1,Z=2)の生成と、混晶の安定なラセミ化合物やラセミ混晶(P1,Z=2)への相移転が考えられる。この移転と、析出結晶におけるキラリテイーの逆転現象とが如何に結びつくのかが、メカニズム解明の鍵となるであろう。
|