研究概要 |
独自に開発した剛直なポルフィン環の周りに,末端にトリメチルアンモニウム基が結合した柔軟なメチレン鎖を4本有するカチオン性ポルフィリン(PnA,メチレンの数(n)が3から9まで合成)を,二次元層状空間をもつフッ素四ケイ素雲母(TSM)へイオン交換法で導入し,ポルフィリン分子の配向・組織化を試みた.その結果,メチレン鎖長が5以上のPnAは,TSMのイオン交換容量に見合う量だけ層間中にイオン交換され,しかも層間中ではポルフィン環はウロトン化されずに遊離型をとっていることがUV-VISスペクトルから確認された.このようにして得られたポルフィリン-TSM層間化合物について,PnAのアルキル側鎖長と層間距離の関係を調べたところ,メチレン数と層間距離にきれいな直線関係があることがわかった.この関係を利用して,POA(ポルフィン環にトリメチルアンモニウム基が直結したカチオン性ポルフィリン)-TSM層間化合物の層間距離が約6.3Åであると見積もることができた.この時,POAの分子径を考慮して,POA分子はTSM層間中で層面に平行から約10度傾いた状態で配列していると推定した.また,TSM層間へのP5Aのイオン交換率を10〜100%と変えて層間距離の変化を調べると,イオン交換量が高まるにつれて層間距離が徐々に増大するのではなく,むしろ段階的に大きくなることがわかった.このことからもTSM層間中に導入されたPnAは,イオン交換率に応じた一定の配向・配列で層間で組織化されていることが明らかになった.ちなみに,100%イオン交換の場合には,TSM層間中でPnA分子が約10Å間隔で配列していると計算される.今後,PnA-TSM層間化合物の配向・配列状態を,分光化学的な手法で更に確認する予定である.
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