研究概要 |
分子間力を駆使した生体の見事な分子組織化法を学んで,分子配列を制御した結晶・組織体を設計し,機能発現システムを構築することを目的とし,金属配位能のある置換基を有するポルフィリンを合成し,その組織化を検討した。まずモノヒドロキノン置換ポルフィリンの中心に,2価のMgに較べより強い錯体形成が期待される3価のGa金属イオンを導入し,その組織化構造体について検討した。二次元COSYNMRスペクトルを用いてその構造を解析したところ,ヒドロキノンのOH基に隣接する2つのプロトンの大きな高磁場シフトが観測され,一方のポルフィリンに置換したキノンのフェノラートアニオンがもう一方のポルフィリン中心金属Gaに相互に配位し合うことによって,2つのポルフィリンが中心をずらして平行に配列した2量化組織体が得られることを見いだした。 またより強力な組織体形成を果たすため,ポルフィリン中心金属以外の外部金属をキレート配位子と組み合わせた組織体を検討するために,アニオン電荷を供給できるキレート配位子である8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の5位でメソ位に連結した化合物を合成した。オキシンがZn金属に配位するとオキシナ-トアニオン形成に伴って5,7位のプロトンの特徴的な高磁場シフトが観測されるが,オキシニルポルフィリンにZnを加えると,7位のプトロンの高磁場シフトが観測され,オキシナ-ト錯体の形成を示し,Znの配位錯体の特徴から平面4配位構造が期待されるので,平面内に2つのポルフィリンを並べた組織体が形成されたものと考えられる。蛍光スペクトルはポルフィリン同士またはポルフィリン-オキシン錯体間の相互作用の存在を示唆し,外部金属イオンとポルフィリン置換キレート配位子を用いる分子組織化が新しい可能性を提供するものであることを見出した。
|