研究概要 |
水素結合と配位結合を同時に利用できる分子システムの構築と新しい機能を持つ物質を目指し,本研究ではビイミダゾール型金属錯体を中心に種々の分子システムの開発を行った. ビイミダゾール配位子は遷移金属イオンに対して安定な2座キレートとして作用し,かつNH-N型の2点分子間水素結合を形成できる.この配位子を用いた構築素子を設計・合成を検討したところ,の配位子の数と遷移金属イオンの配向性より(A)ダイマー型,(B)一次元直鎖型,(C)一次元ジグザグ鎖型,(D)二次元ハニカムシート型,(E)ラセン型の五種類の分子配列を生成した.さらに,この(D)の構築素子はカチオンの存在でその結晶中の水素結合鎖構造をダイナミックに変化させ得ることを見出した.また,[Co^<III>(Hbim)_3]_nの光学異性体Δ型とΛ型をL(+)-酒石酸にて光学分割することに成功した.Δ型は左巻きのラセンをとり,Λ型は右巻きラセンを取ることをX線構造解析にて明らかにした.全体構造はそれぞれにつき2本づつペアになり2重ラセン構造を取っている. 結局,水素結合型の構築素子である[Ni^<II>(Hbim)_3]^-は存在するカチオンの種類によってその結晶構造を大きく変化させることがX線結晶構造解析により判明した.例として(1)一次元チャネル構造:NMe_4^+,(2)ジグザグ一次元鎖構造:^nPr_4N^+,(3)二次元ハニカムシート構造:K-[DCH-18crown6]^+,(4)3次元ポリカテネート構造:NEt_4^+,についてのX線結晶構造解析に成功した.分子間水素結合鎖構造を基準にしたとき,それぞれ0次元,1次元,2次元,3次元鎖構造をカチオンの種類を変えただけで制御したことに相当する.
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