研究概要 |
本研究では,シス,シス-ムコン酸ジエチル(EMU)の結晶に光照射により進行するトポケミカル重合の反応挙動や特徴から重合反応機構を解明し,さらに生成ポリマーの分子量や立体構造の制御についての研究を行った.重合反応はラジカル機構で進行し,結晶の光重合系を直接ESR観測すると長寿命の成長ラジカルが確認できた.300nm付近の光で励起されたモノマー分子から重合活性種が生成し,つづいて成長反応が速やかに進むこと,この重合は光開始系であるにもかかわらず強い温度依 性を示し,光開始に加えて結晶格子歪みによる自発的な開始反応すなわちジラジカル生成反応の起こることを明らかにした.重合後,ポリマーは結晶として得られ,顕微鏡観察やX線回折の結果からポリマー鎖は結晶の一方向に配列していることを確かめた.ポリ(EMU)はトリフルオロ酢酸や1, 1, 1, 3, 3, 3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールにのみ可溶であり,その他ほとんどの有機溶媒には不溶であった.通常の再結晶法で得た結晶を重合すると,1-2X10^3cm^3/gと大きな極限粘度(トリフルオロ酢酸中,30℃)をもつポリマーが得られ,重合条件(温度,時間,収率)による影響はほとんど認められない.これに対して,破砕,凍結乾燥,再沈殿などにより微結晶を調整し重合を行ったところ,条件に応じて2x10^2-2x10^3cm^3/gの極限粘度をもつポリマーを得ることができた.トポケミカル重合で得たポリ(EMU)の13C-NMRスペクトルの化学シフトの値とX線構造解析の結果からここで生成したポリ(EMU)は高度に規制されたメゾジイソタクチック構造をもつことがわかった.
|