酒石酸から誘導されたキラルなホストは光学分割に有用であるばかりでなく、包接体を使った固相反応を行うことにより不斉合成が達成できる。しかし、ホスト化合物のわずかな構造の違い、つまりシクロアルカン部分が5員環(Host5)か6員環(Host6)かで、反応生成物が異なる例が多数みられる。アクリルアニリドの光環化反応で不斉が逆転するのがその良い例である。これら包接結晶における不斉制御の機構を明らかにするために、包接体およびホスト化合物の構造解析を行った。その結果、Host5とHost6との包接結晶中でゲストであるアクリルアニリドの分子構造が鏡像関係になっていることが明らかになった。重要な点はゲスト分子の骨格中央にC-N-C(=O)-Cのねじれ角が+あるいは-のいずれかに制約されることである。
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