研究課題/領域番号 |
08223218
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 一良 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70191640)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1996年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 高濃度近藤効果 / 価数揺動 / 価数転移 / 重い電子系 / イッテルビウム化合物 / 高圧合成 |
研究概要 |
価数転移を示すYbInCu_4や高濃度近藤効果を示すYbAgCu_4などの注目すべきC15b型化合物について研究を続けた結果、これらの母体となる化合物が、同じC15b型結晶構造を持つYbCu_5であることを見いだした。YbCu_5はこれまで、六方晶CaCu_5型構造(C15b型のBeCu_5型構造とはスタッキングが異なるだけ)をとるとされてきたが、その低温相、または、高圧相として立方晶C15bYbCu_5が存在することを明らかにした。この合成条件として、1.5GPaの高圧下、900℃での反応によって単一相試料を得ることに成功した。磁化率は高温でYb^<3+>のキュリーワイス則を示し、10K程度で極大を持ち、低温では一定値をとる。電気抵抗は磁化率の極大以下の温度域でフェルミ液体論で予言されているような温度の2乗の依存性を示す。従って、この試料は高温で安定であったYb^<3+>の局在モーメントが低温で伝導電子との混成により非局在化する、いわゆる高濃度近藤系であると考えられる。この結果に対応し、強磁場過程を調べるとフェルミ液体状態からレベルクロッシングを起こしながら磁気モーメントが回復するメタ磁性的な振る舞いが見えられた。また、比熱測定の結果、低温での電子比熱係数は550mJ/K^2molとYb化合物中では最も大きな値となり、重い電子系化合物であることが明らかになった。更に、YbCu_<5-x>Ag_xなる系の合成を銀濃度xを1からゼロに向かって行い、その単相試料を得ることに成功し、それらについてマクロな物性の測定を行った。その結果、この系は典型的な高濃度近藤効果を系統的に示し、その特性温度がxの増大に伴い高温側にシフトしていく系であることが明らかになった。更に、価数転移を示すYbInCu_4と立方晶YbCu_5との間の擬二元系YbCu_<5-x>In_xを0≦x≦1の全組成範囲で合成し、価数転移を伴う、価数揺動系と高濃度近藤系の間のクロスオーバーを系統的に調べ、途中で近藤絶縁体的振る舞いを観測した。今後、これらの系について核磁気共鳴によるミクロな面からの電子状態の研究を行っていく予定である。
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