研究概要 |
年々高負荷化が著しい航空宇宙エンジンにおいて,CO_2フリー燃料としての水素は高速反応の観点からも優れている.本研究は,未来型航空エンジンである,水素を燃料したスクラムジェットエンジンの保炎に関するもので,エンジン内の燃焼領域に衝撃波を入射させることによって保炎性能を向上させることを目的としている. 本年度は,三角柱ストラット保炎器後流の燃焼領域に入射する衝撃波の非対称化,衝撃波入射位置,衝撃波強度,流路閉塞率を変化させ,保炎性能に及ぼす影響を調べた.その結果,以下の知見を得た. 1)衝撃波入射位置がストラット後端に近づくにつれて、再循環流は強化され保炎限界流量は増加することがわかった.逆に,ストラット高さ以上下流へ入射すると保炎限界流量は低下せず、閉塞率の高い場合には逆に上昇する複雑な挙動を示すことがわかった. 2)衝撃波が強いほど再循環流が拡大・強化され、保炎限界流量は増加すること,ストラット後端近傍に入射すると保炎限界流量の増加は大きいが,下流へ入射する場合、衝撃波の強さの違いよる差は少なくなることがわかった. 3)衝撃波非対称入射では,再循環流と噴流は後流内で偏り,保炎限界流量が増加し保炎性能向上に有効であることがわかった. 4)衝撃強度の増大および入射位置の非対称化は,閉塞率を大きくすると,後流幅が減少し保炎限界が低下することが明らかになった.また, 次に,総括反応速度を変化させることを目的として,水素に少量のメタンを添加した場合の保炎実験を行った.その結果,以下の知見を得た. 5)水素流量に対する2%以下のわずかなメタン添加でも保炎限界が大きく狭まり,メタン添加量の増大により,保炎限界全温も上昇することが判明した.これは,メタン分解反応によりHラジカルが消費されるため,メタンの熱分解が完了するまで活性種の増殖が起こらず,着火時間が増大することが原因と考えられる.
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