研究概要 |
水素乱流燃焼はエンジン内燃焼,ガスタービン燃焼など広い範囲で観察される現象であるが,乱流場と化学反応が相互に干渉し合う非常に複雑な現象であるため,その機構解明は十分に行われていない.高効率の実用燃焼器を設計・開発するためには,乱流状態で燃焼している予混合火炎の諸特性を精度良く予測可能な乱流燃焼モデルを構築する必要がある.本研究では乱流予混合火炎の伝播機構及びフラクタル特性などを明らかにするために,高次精度差分法とスペクトル法を用いて,二次元一様等方性乱流中を伝播する水素・空気乱流予混合火炎の直接数値計算を行った.化学反応機構としては9化学種21素反応からなる詳細化学反応機構を用い,輸送係数・物性値の温度依存性を考慮に入れた.局所火炎厚さの確率密度関数は層流火炎厚さよりも小さな値でピークを示し,火炎面が未燃側に凸の場合局所火炎厚さは厚くなり,既燃側に凸の場合薄くなることを明らかにした.局所熱解放率は,火炎面の曲率と密接に関係しており,火炎面が既燃側に凸の場合熱解放率が大きくなり,未燃側に凸の場合熱解放率は小さくなることを明らかにしたが,これは水素と酸素の拡散係数の違いにより,局所的な火炎構造が変化するためである.また,局所熱解放率と火炎面の接線方向の歪み率の間には相関があり、当量比が大きな場合接線方向の歪み率の増加とともに局所熱解放率はほぼ線形に増加することを明らかにした.乱流予混合燃焼に対する乱流燃焼モデルを構築するために,直接数値計算により得られた火炎面に対してフラクタル解析を適用した.この結果,二次元一様等方性乱流中を伝播する水素乱流予混合火炎は明確なフラクタル特性を示すことが明らかとなり,そのフラクタル次元は非反応性二次元乱流中のscalar等値線のフラクタル次元とほぼ一致することが明らかになった.
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