研究概要 |
塩化カルシウム系のケミカルヒートポンプでは,排熱や太陽熱などの低エクセルギー熱源を利用した冷熱発生が可能である.例えば塩化カルシウム・メチルアミン系ヒートポンプでは,理論的には70℃の熱エクセルギーのうち31%を5℃の冷熱として回収できる.しかし固体反応層では反応熱による温度分布形成や拡散抵抗のために反応の進行が妨げられ,エクセルギー効率の損失を招く.このような制約を反応材料,反応装置・操作の面から解消することを目的として,ヒートポンプを連続運転時の最適操作条件の検討ならびに固体粒子の反応性改良を行った.安定した連続出力を得るために同一反応サイクルが繰り返される場合のシミュレーション解析を行い,最大の反応量が得られる粒子層高さが約2mmであること,脱離温度が高いほど1サイクルの反応量は増大しサイクル切換時間は短くなるため,脱離温度によって連続運転時の反応サイクルは大きく異なった構成になることが分かった.反応性の改良に関しては,膨張化黒鉛の細孔内で塩化カルシウムを析出させた複合化粒子を調製することによってその反応速度を約2倍に増大させることができた.また,SEM写真による粒子構造の検討ならびに細孔容積の測定から,塩化カルシウムは黒鉛細孔内に微粒子として析出しており,複合化による反応性の向上は微細細孔の生成に伴う反応面積の増大によるものであることを確認した.
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