研究概要 |
界面活性剤溶液の二液相分離は,メゾスコッピクな分子集合体としてのミセルを形成する領域で出現する。この1分子中の極性基と非極性基の存在に起因するミセルの形成と,ミセル間の相互作用に起因する二液相分離現象の電界下での性質に関する基礎的知見を得ることを目的とし,本研究では,界面活性剤C_<10>E_4(テトラエチレングリコール・デシルエーテル)+水系の臨界組成溶液を用いて,ミセル溶液の二液相分離現象における電場の影響について調べた。本研究で得られた主な結果を次に要約する。(1)1600V/cmの電場を印可された試料溶液では透明な均一相が観察されたのに対し,電場を印可されないセル内の溶液では相分離を示唆する白濁が観察された。これは,電場が相分離を抑止することを示唆している。(2)臨界温度からの温度差5【less than or equal】T_c-T【less than or equal】700mKの範囲において,印可電場0V/cm,400V/cm,1200V/cm及び1600V/cmのそれぞれについて,動的光散乱法によるミセル溶液の散乱光の時間相関関数の測定を行った。この相関関数の解析から見積もられた臨界ゆらぎの減衰率Γの差異は約1%で,異なる温度の測定においてもそれらの差異はたかだか2%であった。この差異はたかだか実験誤差のオーダーで,印可電場には殆ど依存しないことが分かった。(3)最短で1.4mmの距離にあるピン電極をもつスライドガラスに封入されたミセル溶液に50V/cmの電場を印可し,その臨界点近傍での位相差顕微観察を行った。この観察から,電極の近くでは相分離を示す濃度ドメインは現れず,試料溶液にかかる電場が弱い領域では相分離濃度ドメインが出現した。これは,電場が強い領域では相分離が抑止される傾向にあることを示唆している。(4)臨界温度から約1K離れた温度で,相分離濃度ドメインの界面に対する電場を影響を顕微観察し,濃度ドメインの界面に対する電場の影響を示唆する結果を得た。
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