計算機シミュレーションの結果に基づいた新たな相図を提案した。そして、HDA-LDAの臨界点の位置が負の圧力領域に移され、LDA (Water II)と過冷却水は大気圧下では異なる相であると考えられる。水は相転移を経てLDAになる。この相転移はfragileからstrongへの転移を伴い、これまでに観測された実験事実とも矛盾がない。熱力学量の発散は、臨界点の存在とスピノ-ダル不安定化により説明され、T_5が圧力と共に負の方向に移動している実験事実とも一致している。 二相共存領域は臨界温度以下の温度であり、相平衡と臨界点の存在を記述するための秩序パラメーターとしては二相の密度差が妥当である。秩序パラメーターは臨界点より上の温度では0でありNormal WaterとWater IIの区別は無い。臨界温度以下では気液平衡と同じように、秩序パラメーターは有限の値となり二相が存在することになる。両方の相とも長距離秩序を持たないことや両方とも液相で秩序パラメータは小さいことから、この二種類の液体の分子配置における差があまり大きいことは期待できない。しかし、Water IIは氷よりも1kJ/molエネルギーが高いだけであり、この差はNormal WaterとWater IIの差1.5kJ/molよりも小さい。また相平衡を仮定した自由エネルギーの計算からWater IIは氷よりわずかにエントロピーが大きい状態であり、過冷却の水と比べて、これまで想像されていた以上に水素結合の欠陥が少ないものと予想される。
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