本研究では、ガラス転移のモード結合理論を2成分系に拡張しサイズの異なる粒子から成る2成分剛体球系に適用して、過冷却状態での緩和過程、ガラス転移を研究した。具体的には、密度揺らぎの時間空間相関関数に対するモード結合理論の方程式の数値解析を行ない、密度相関関数とそのスペクトル、および感受率を解析した。それにより、以下の結果が得られた。 ・2種粒子の半径比が0.2より小さくなると、小さい粒子の局在長が非常に長くなる相が現れる。 ・その場合、大きい粒子の振舞いは1成分液体とほぼ同じであるが、小さい粒子に関しては、α-緩和のスケール則(time-temperature superposition)が満たされていない。 ・小さい粒子の相関関数には、時間に対して対数的に減少するような時間領域が存在する。 ・小さい粒子の感受率には、β-緩和に対応する周波数領域にα-ピークよりも高いピークが現れる。これは大きい粒子の作るランダムポテンシャル中での小さい粒子の速い緩和に対応すると考えられる。 ・大きい粒子ではβ-緩和のミニマム付近のスケール則が成り立つのに対して、小さい粒子ではそれからのずれが見られた。
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