研究概要 |
高温超伝導体のトンネル効果の実験でしばしば観測されるゼロエネルギー状態のピークは,準粒子の感じるペアポテンシャルの符号変化から生じる異方的な超伝導体に特有な現象であることを我々は明らかにした。この理論では,[110]方向に対してはゼロバイアスのコンダクタンスのピークが観測できるのに対して,界面が[100]方向を向いているときには消失することを予言した。しかし,実際のサンプルを碧開した資料を用いる実験では必ずしも界面がフラットとはいえず原子尺度のランダムネスが存在する。このような場合には準古典近似の予測はかならずしもなりたたない。本研究ではタイトバインディングモデル(拡張型ハバ-ドモデル)を用いることで,さまざまな界面(表面)近傍の状態密度をスーパーユニットセルの方法で行った。特に周期的なジグザグ構造を一般化したブロッホの定理を用いることで1次元に問題を帰着化させ,2次元モデルでは扱えない非常に大きなサイズを扱うことに成功した。その結果,見かけ上[110]の表面に対してゼロバイアスのピークのないデータが存在することもあることを示した。一方,ほとんど[100]の表面でも原子尺度でのでっぱりの近くで,ゼロバイアスが存在することが予測された。現在ド-ピング依存性を明確にするために,t-Jモデルを用いた同様な計算を行う準備を行っている。また常伝導体/絶縁体/トリプレット超伝導体の接合のトンネル電流の計算も行った。特に非ユニタリー状態のトンネルコンダクタンスには残留比熱同様常伝導の成分が大きな影響を与えることが明かになった。
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