近年、ペロブスカイト型マンガン酸化物における非常に大きな磁気抵抗効果(CMRと呼ばれる)が注目されている。この酸化物は組成により多様な磁気的、電気的性質を示す。LaMnO_3やPrMnO_3は層状構造の反強磁性(AF)絶縁体(A-型AF)であり、LaやPrをSrやCaで置換すると、強磁性金属状態が現れる。50%置換された組成ではCE-型AFと呼ばれる複雑な反強磁性電荷秩序相が現れる。更に置換すると、ストライプ型AF(C-型AF)や通常の反強磁性状態(G-型AF)が現れる。CMR効果は(La-Sr)MnO_3や(La-Ca)MnO_3だけでなくPr_<0.5>Sr_<0.5>Mn0_3やPr_<0.5>Ca_<0.5>MnO_3にも見出されている。後者の場合には、反強磁性電荷秩序相が外部磁場により強磁性金属相へと変化する。これは磁場による絶縁体-金属転移とみなすことができる。これらの現象は、この系の多様な磁気状態と密接に関連している。そこで、この系の物性を理解する手始めとして、磁気状態の研究を行った。 マンガンイオンは3d^4配位であるので、t_<2g>とe_gスピン間のフント結合、e_g軌道の縮退、e_g電子間のクーロン相互作用が重要となる。これらの要素を含んだ模型から出発し、まず有効ハミルトニアンを導いた。この有効ハミルトニアンでは、スピンと軌道の自由度が結合しており、その結果多様な磁気状態が期待される。このことを調べるため、2*2*2のクラスターに厳密対角化方法を適用した。その結果以下のことが明らかにされた。 LaMnO_3におけるA-かたAFはスピンと軌道との絡み合いの結果生じる。電荷配列相においては、強磁性相、A-型AFとフェリ磁性とが狭いパラメーター領域に現れる。ここでのA-型AFの出現もスピンと軌道との絡み合いの結果である。この絡み合いは磁化過程にも影響することが示された。
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