研究概要 |
3d遷移金属の強磁性の研究において電子相関の効果の評価が難しい。そのため、厳密な理論を用いて議論する努力がなされているが、未だ現実の鉄族の強磁性そのものを議論するまでに至っていない。我々は近似理論であれ、物理的な考察によって十分な精度で強磁性の発現機構を検討できると考えている。現在、現実的には次のような機構で説明できるとの結論に達し、さらに近似と考察を発展させているところである。 実験事実として、3d遷移金属ではs,p電子による遮蔽によって、d電子間のクーロン相互作用は小さいことがわかった。一方、d電子間に働くフント結合はスピン間の相互作用のため遮蔽されず、クローン相互作用に近い大きさになる。こうして、3d遷移金属では軌道縮退を考慮し、フント結合の寄与を検討することが重要になる。Gutzwiller近似で取り扱った岡部を中心とした研究によって、次の結論が得られた。 結晶構造にゆらいするエネルギー状態密度の形とフント結合によって,Fe、Co,Niの強磁性が説明できる。フント結合無しでは強磁性の実現は大変難しい。状態密度の2つのピークがないとFeとCoの不完全強磁性の説明が難しい。
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