研究概要 |
本研究は,BIFやチャートを試料として,数十億年間の古地磁気の調査を行うために,まず有効な調査法を開発することを目指している.実験手法として,超伝導磁気測定システムによる磁気ヒステリシスの調査と,1mm精度の磁場(鉛直成分)分布の測定,熱消磁実験などを行う.磁化特性は最近の研究から環境変動の指標であることも知られており,本研究は古環境の調査手法の開発でもある.本年度は以下のような成果を得た. (1)チャートやBIFの縞状構造の調査のため,超伝導磁気特性システム,精密鉛直磁場測定システム(HFD),熱実験の電気炉などを整備した.7テスラまでの強磁場で磁気ヒステリシスが測定できるようになり,微弱なチャートも調査できるようになった.またHFDシステムによる鉛直磁場の微細構造の解析は,人工物を用いた実験から1mm精度の空間分解能が得られ有用性を実証できた.その後、愛知県犬山に分布するチャートと南極デュモンデルビルのBIFについて地質学,岩石学的な調査と情報を収集し、開発した岩石磁気の手法による調査を実施した. (2)愛知県犬山のチャートでは,T/J境界を挟む領域を対象とした.同領域のチャートはピンク色であり周囲と異なる特質が考えられていた.HFDの測定は,T/J境界で顕著な磁場の変化を示した.蛍光X線スキャンでは鉄やシリカ成分の変化はなく,その他の磁場測定以外の調査では,ピンクベッド層での異常は検出されていない.そこでさらに磁化特性の調査を進めるために,5mm角の小試料での実験を行った.帯磁率測定なども併用した結果,同領域では地磁気の逆転が生じていることが判明した.つまり犬山チャートのT/J境界のピンクベッド層は,McElhinny(1976)で示されているNuanetsi Zoneの地磁気の磁極逆転領域に当たると考えられた. 南極のBIFでも縞状構造に対応する磁場分布が顕著に認められた.
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