研究概要 |
昨年夏にアフリカにおいて,約6週間にわたり地質調査および岩石試料採取を行い,さらに得られた試料について薄片観察および化学組成分析を行った.調査は約35億年前の,地球史上をもっとも高温のマグマであったと考えられているアルミニウム枯渇型のコマチアイトの分布するバーバートン緑色岩帯と,世界でもっとも新鮮な太古代コマチアイトが分布するベリングウェ緑色岩帯を中心に行った.本研究では,両地域で採取したそれぞれ700個,500個のうち約半分の岩石について薄片を製作し,顕微鏡観察を行った.バーバートン緑色岩帯は角閃岩相にまで達する変成作用を受けていることが知られており,本研究の目的である火成作用の研究に達した,変成度の低く,また変質をあまり受けていない岩石の選別をまず行った.それらの試料について蛍光X線分析装置によって全岩化学組成分析を行った結果,当地域の緑色岩は玄武岩からコマチアイトまで広い化学組成幅をもっていること,すなわちマグマの温度に大きなバリエーションがあること,またそれらの分布はトリモーダルになっており代表的な3つのマグマがあることなどが明らかになった.また顕微鏡観察の過程で,コマチアイトに特徴的なカンラン石や単斜輝石の斑晶を多数見つけることができた.今後よりこれら残存火成鉱物の研究を行うことにより,変成作用の影響をより取り除いた研究成果が期待される.ベリングウェ緑色岩帯のコマチアイトには新鮮なメルト包有物があることが知られていたが,今回それらを多数確認することができた.それらを電子線マイクロプローブで分析したところ,マグネシウムに富む高温のマグマがスピネル斑晶に捕獲され急冷後,ガラス化したものであることがわかった.これまで報告されていた包有物は捕獲当時の化学組成を保持していなかったため,その分析値の解釈には議論がある.今回発見したものは高温状態からほとんど変化を受けずに急冷されたものと考えられるため,今後のさらなる化学分析によって重要な知見が得られるこいとは間違いないだろう.
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