研究課題/領域番号 |
08228209
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
熊澤 慶伯 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60221941)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1996年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 先カンブリア代 / 生命と地球の共進化 / 分子系統樹 / 伸長因子 / セレン / メタン細菌 / 無酸素呼吸 / フマル酸還元酵素 |
研究概要 |
太古代地球における生命と地球の共進化を解明するために、遺伝子の塩基配列を用いた分子進化学的アプローチを試みた。まずセレノシステイン特異的伸長因子の遺伝子(se1B)に着目し、既知の大腸菌se1Bとの相同性を指標にして古細菌の一種であるメタン細菌からse1B遺伝子を同定した。アミノ酸非特異的伸長因子tufA、開始因子infB、se1Bなど互いに相同性を持つ遺伝子群を含んだ分子系統樹を作製したところ以下のことが示唆された。1)初期生物において開始因子と伸長因子の役割が分かれた後になってセレン化合物を特異的に利用する伸長因子が誕生した。2)Doolittleらによって計算された全現生生物につながる共通祖先の推定年代(約20億年前)を基準とすれば、開始因子と伸長因子の分岐は約32億年前、セレンを生物が利用するようになったのは約30億年前のことと推定された。3)古細菌と真核生物が真正細菌に対して近縁であることが支持された。セレノシステインは生体内の過酸化水素を除去する役割を持つグルタチオンペルオキシダーゼの活性中心に位置することが知られている。従って30億年前には既に酸素呼吸を行う生物が出現しており、酸素呼吸の副産物として発生する過酸化水素の除去を行う必要性が生物に生じていたのかもしれない。次に無酸素呼吸系に関与する遺伝子がいつごろ誕生したかを探るために、真正細菌で見出されている無酸素呼吸系遺伝子が古細菌にも存在するかどうかを調べた。現時点までにフマル酸還元酵素遺伝子(frd)がメタン細菌にも存在することが分かり、無酸素呼吸系遺伝子の一部は少なくとも20億年前には誕生していたことが示唆された。しかし前述の伸長因子の場合と異なり、frdに対して明確な相同性を示す他の遺伝子群を見出せなかったため、20億年前から先にどのくらい遡るのかについては不明とせざるをえなかった。この点は今後に課題を残した。
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