研究概要 |
平成8年度の研究の主要な目的は,平成7年度に琵琶湖中央部で採取した7本のピストンコアの分析を進めること,ピストンコアでは困難な表層部の試料を採取するためにグラヴィティーコアによる採取を行うこと,および加速器を用いた炭素年代を測定することなどであった. 第1の目的については,環境磁気学的な立場から詳細な分析を第2および第3地点の試料について行った.特に,第3地点では3本のコアがあるので,同一地点(数メートルの範囲)でのコア間の均質性がどこまであるのかという問題を集中的に検討した.その結果,磁化率,S比,ARM,SIRMなどの間では,長周期のパターンは完全な一致をみるが,その一方でスパイク状の孤立ピークの対比は個々には困難であることが判明した.このような困難性の原因はまだ不明だが,あるいは堆積物の本質的な面ではないかとも考えている.長周期の変動からは,完新世の気候変動の手がかりとなるようなデータが得られた.とくに磁性鉱物の粒径を推定できるパラメータは,約3000年前に最小となり,そのご約9000年前まで粗大化の一途をたどっている.このパターンを,今後風成塵の増減と続成作用の混合というモデルに基づいて解析しようと考えているところである. グラヴィティーコアは同じく琵琶湖中央部より11本採取した.試料は冷蔵保存したのち,乾燥させることなく分割採取する方法を検討してきた.比較的うまくいく方法が見つかったので,1cmぐらいの厚さごとに凍結乾燥させる作業を目下行っており,それがすんでから分析を開始する予定である. 加速器を用いた炭素年代については目下進行中である.オランダの研究機関での計測が終わった段階であり,目下補正計算や結果の評価を行っている.
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