本研究の目的は、ウラン-鉛年代測定法を南部アフリカおよびオーストラリアの原生代堆積岩中のジルコンに応用し、両者の比較を行うものである。しかし堆積岩中のジルコンは非常に細粒かつ微量であり、年代分析が困難であるため、本研究ではクラトンに広く分布する花崗岩質岩を用いて研究を行った。現在までに、南部アフリカのジンバブエクラトンについての研究を中心に行い、ジルコンの形態分類を行って年代分析の基礎試料とした。 ジンバブエクラトンの花崗岩質岩は、35〜30億年の古期花崗岩質片麻岩(OG)と29〜26億年の新期花崗岩(YG)に区分される。両者はそれぞれト-ナル岩と花崗岩に分類されるが、必ずしもその区分が適応されるとは限らない。しかし、微量鉱物であるジルコンの形態(大きさ、伸長比、二重成長の有無)や化学組成(Hf/Zr比)を調べることにより、以下のように両者の区分を行うことができた。(1)YGは自形ジルコンが多く、長柱状の粗粒ジルコンを含む岩石もあった。しかしOGでは短柱状のものが多い。(2)二重成長を示すジルコンはOGで多く、YGではほとんど見られない。(3)OGでは、Hf/Zr比がジルコンの中心から不連続に増減し、二重成長が確認された。一方、YGではHf/Zr比が中心から連続的に増加するため、二重成長の証拠は見られない。以上の結果より、OGに二重成長を示すジルコンが多いのは、少なくとも2回の熱的イベントを受けているためと考えられる。その可能性としては、OGの固結後の変成作用(または、それに伴う部分溶融)によりジルコンの一部が二重成長したものと考えられる。これはOGのジルコンのHf/Zr比の不連続性からも明らかである。一方YGは、メルト中での新たな核形成と均質な累帯構造によるジルコンの成長を示すものと考えられる。したがって融食再成長を示さない自形ジルコンが多い。これら異なる起源のジルコンの年代から、ジンバブエクラトンの地殻進化過程を明らかにすることができる。
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