研究概要 |
地球史における生物の役割は,細菌における光合成能力の獲得とその進化が重要である.本研究では,光合成細菌の多様性とその進化について,地球史との関連性に注目して研究を行った. 光合成細菌は,系統および生活の仕方や環境への適応を主に考えると,3つに分けることができる.どのグループの光合成細菌が一番古いタイプかを明らかにするために,リボソームRNAの解析から一番古い光合成細菌であることが示唆されていたクロロフレクサスとその他の好熱性細菌を国内の各地の温泉から単離し,新種記載をおこなった.光エネルギーを化学的エネルギーに変換する装置である光合成反応中心複合体の遺伝子の塩基配列を,クロロフレクサスと紅色細菌の約40種で決定し,系統樹を作成した.その結果,クロロフレクサスと紅色細菌の系統関係は,リボソームRNAの場合と光合成反応中心遺伝子の場合とでよく一致し,光合成能力の面からもクロロフレクサスが一番古いタイプの光合成細菌であることが支持された. クロロフレクサスが一番古いタイプの光合成細菌であるとした時の問題点の一つは,好気的な環境にもよく適応しているということである.酸素の存在と古いタイプの光合成細菌との関係についての情報を得る目的で,絶対嫌気性とされている緑色イオウ細菌も含めて,光合成と酸素の関係を調べた.その結果,緑色イオウ細菌およびクロロフレクサスのクロロソームと呼ばれる光捕集構造にキノンが含まれていることをはじめて報告し,キノンの働きで緑色イオウ細菌においては酸素の存在で光合成機能が調節されたいることを示した.これらの結果は,原始的な光合成も酸素の存在に適応していることを示し,光合成出現当時の地球環境に無生物由来の酸素分子がすでに存在していたことを示唆する.
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