研究概要 |
微視的観点からの超イオン性の発現機構を明らかにするとともに,この基礎研究に基づいて,酸化物超伝導体中の酸素拡散や生体膜中のNa^+輸送を微視的観点から調べた。さらにd電子が超イオン導電相出現機構に重要な役割を演じていることを考慮し,価電子の他にd電子の影響を取り入れたAgI,CuXの有効電荷の計算を行い,以下の結果を得た。 (1)超イオン性の発現機構について p-d混成によりdouble well potentialを形成し,これに起因してフレンケル欠陥の活性化エネルギーの低下し,超イオン相転移の発現につながることを提言した。 (2)酸化物超伝導体中の酸素拡散について RBa_2Cu_3O_<7-δ>(R=rare earth)型酸化物超伝導体では、Cu(3d)とO(2p)との強い相関のためにO(4)原子がc軸方向にわずかに変位しdouble wellを形成する.このO(4)原子の分極場によってCu-O面内にいるO(1)原子が駆動され,面内を拡散する.したがって高温超伝導体中のO(4)サイトでの局所格子歪は強いp-d電子相関に依っていると見なし,これに起因して酸素のフレンケル欠陥の活性化エネルギーの低下を予測した. (3)CuXの有効電荷について AgI,CuXの場合,AgとCuイオンのd電子エネルギーレベルは価電子バンドのエネルギーレベルに近く,そのためd電子が価電子バンドに容易に昇位すると考えられる。価電子バンドに昇位したd電子は価電子バンドの有効電子数を増加させ,その結果,有効電荷が増加する。d電子の影響を取り入れてAgI,CuXの横有効電荷の値を見積った。
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