研究概要 |
空孔欠陥型スピネル構造において,銅とインジウムが同時に固体内を動いているイオンダイナミクスを調べる目的で,パルスNMR法[Bruker社のMSL400]で空孔量変化に対応したCuIn_5S_8,CuIn_<11>S_<17>,CuIn_<21>S_<32>,の試料を用い^<63>Cuおよび^<115>Inの線幅の変化の温度依存性を調べた. ^<115>Inと^<63>Cuの空孔量変化に対応した線形測定結果は^<115>Inの2つのピークの内大きな方のピークが16dサイト(八面体位置)にあるインジウムイオン,小さい方のピークが8aサイト(四面体位置)にあるインジウムイオンのピークに対応し,空孔量増加に対応して^<115>Inのピークが広くなり,空孔を導入することによって,インジウムの周りの対称性が悪くなっていると考えることができる.^<63>Cuの空孔量依存性では、空孔量増加で線幅が広くなっており,空孔導入による対称性の乱れが考えられる. CuIn_<11>S_<17>の^<115>Inの線形の温度変化は500Kで16dサイトのシャープなピークが有るものの8aのゆるやかなピークはほとんどわからなくなり,これは銅イオンの運動などによって空孔も移動し,それがインジウムイオンの周りの対称性を著しく悪化させてしまったためと解釈できる.^<63>Cuの線形は温度が高いと線形がシャープになりかつ化学シフトが観察された. 16dサイトのInイオンのイオン移動経路での運動は空孔欠陥量を増大させることにより,16dサイト8aサイト(四面体位置)の空孔に近くその影響を受けやすいため線形が非常に広がり,8aサイトのInイオン自身は8aサイトの空孔による影響受けにくいと考えられる.高温でのInイオンのイオン移動経路での動きは8aのピークが変化し16dが残っていることから8aサイトのInイオンの動きが小さいことが考えられる.高温のCuのピークがInのものに比し変化が少ないことからインジウムの動きが銅に比べ小さいことが考えられる.
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