研究課題/領域番号 |
08230221
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1996年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 水クラスター / 水素結合ネットワーク / 疎水性水和 / 構造形成 / ダイナミクス / 水の回転相関時間 / NMR / 界面活性剤 |
研究概要 |
無極性分子ベンゼンの周りの水の構造とダイナミクスをNMRで研究し、以下の事実を明らかにした。(1)芳香族分子のプロトタイプであるベンゼンの水和(疎水性水和)殻中の(重)水の回転相関時間τ_<2R>がバルクの値より大きく、水和殻の水は溶質ベンゼンに直接束縛され(配位し)ていないにもかかわらず、回転運動が抑制されていることが解明された。これは疎水性分子の壁で反発さ(嫌わ)れた水分子同士が水和殻中でより強い水素結合を形成する結果であった。(2)温度が低いほど疎水効果(水和殻中の水のτ_<2R>>バルクの水のτ_<2R>)は顕著である。この結果は水素結合ネットワークが温度の低下によって発達することによる。(3)ベンゼンの疎水性水和による溶媒分子の運動の低下は、水の回転相関時間の測定だけでなく、自己拡散係数(並進運動)の測定からも確認できた。 溶媒側からだけでなく、溶質側からも疎水性水和を研究した。(4)水の構造が破壊される高温領域では、溶質ベンゼンの回転相関時間は、水よりも長く、流体力学的であるが、低温領域では疎水性水和殻の発達によりベンゼンの方が回転緩和が容易になることがわかった。(5)水が過冷却された低温(-18℃)では、新しい状態が出現し、その回転相関時間は水溶液の値より小さい。このとき溶媒の水の信号は消えるので、溶媒は固化し、ベンゼンのclathrate hydrateが生成したと考えられる。ゲスト分子ベンゼンはホスト(水)のケージの中で高速回転をしていることがわかった。 界面活性剤イオンOctyltrimethylammoniumの炭素鎖の周りの水クラスターについても同様の実験を行った結果、(6)疎水性水和においては、σ電子系の脂肪族分子の場合でもπ電子系の芳香族分子の場合と同様に回転運動が抑制されていることが明らかとなった。
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